便の色別・下痢で疑われる病気とは
一口に下痢といっても、原因はいろいろあります。
そして、それは軽症から重症まで様々です。大腸などの消化管は意外に敏感で神経質です。
ストレスで胃が痛いなどと同様に、精神的な動揺に反応して下痢してしまうこともあるのです。
その下痢はすぐに受診して治療した方が良いのか、様子を見ていいのか判断していく必要があります。
便の色はいつも通りで下痢になっている場合
便の色が変わらない場合は、緊急性はさほど高くないケースがほとんどです。
暴飲暴食による下痢
食べ過ぎで水分を吸収するメカニズムが追い付かないために起こります。
牛乳や乳製品を摂った時の下痢
牛乳などに含まれる乳糖という成分を分解する酵素が少ない人がいます。
乳糖不耐症と言って、「牛乳を飲むとお腹が痛くなる」という状態です。
乳糖が体に入ると分解されず腸内に蓄積してしまうのですが、この乳糖は水分を引き寄せる性質があり、このために下痢状態となります。
人工甘味料を多く摂った時の下痢
人工甘味料は腸内に水分をためやすい性質を持っているためです。
アルコールを大量摂取した時の下痢
飲みすぎると水分も当然摂りすぎますし、脂肪分や糖分が消化吸収されにくくなるので下痢状態になります。
薬剤による下痢
抗生物質などで善玉菌も殺菌してしまうための下痢もあります。
抗生物質が出る時は整腸剤と一緒に服用することも手です。
また、長期の抗生物質の投与は、耐性菌を招き下痢を起こす着膜性腸炎になることもあります。
便の色が正常のまま下痢になっているときは、飲みすぎ食べ過ぎや薬を飲んだ後など、「何となく思い当たる節がある」ということが多いです。
2~3日で自然に軽快するようなら心配いらないでしょう。
便が黒色で下痢になっている場合
便が黒いときは要注意です。体内で出血している可能性があります。赤よりも黒く見える時は、その出血量も多く重症の可能性があります。
胃や十二指腸の潰瘍
潰瘍部位からの出血ですが、胃酸などの影響で酸化が早くその後の長い消化管を通ってくることもありかなり黒く見えるでしょう。
更に下痢状態になっているということは、出血が続いていることが考えられます。緊急受診の対照です。
消化管のがん
がんのステージが上がって、がんが「びらん化」してくると出血を伴い始めます。
手遅れになると生命にかかわるので、やはり緊急受診が必要です。
大腸がんでは、便秘と下痢を繰り返すとともに便に血液が混じってきます。
初期では、黒や赤などはっきりとは便に色がついてこないので、検便などで発見されます。
細菌による下痢
「腸炎ビブリオ」では、魚介類が原因で激しい下痢や腹痛が起こり、血便がみられることもあります。
血液が多いと黒っぽく見えることもあります。
毒素による下痢
腸管出血性大腸菌の「O-157」は、加熱処理されていない肉や野菜で起きやすく、腹痛や下痢と共に下血することがあります。
やはり下血が黒く見える時があります。
炎症性の腸の病気
原因不明の難病で「潰瘍性大腸炎」や「クローン病」という病気があります。
下痢や腹痛と共に血便が出て便が黒っぽく見える時がありますが、便は粘液交じりになることが多いです。
便が白色で下痢になっている場合
便が白いという状態はウィルス感染症が原因で起こります。
また肝臓・胆嚢・膵臓などの疾患で胆汁という便に色を付けるビリルビンという消化酵素の排泄が滞っている場合も白便が出ます。
ロタウィルス、ノロウィルスによる下痢
ロタウィルスは乳幼児に、ノロウィルスは子どもから大人までみられるウィルス感染症です。
便が白っぽくまた灰白色に見えることがあります。
胆嚢、肝臓、膵臓の疾患による下痢
胆汁は食べた物の中で特に脂肪分を消化する強い消化酵素です。
肝臓で作られ胆嚢で貯められて必要時放出され、ビリルビンが便に排出され色素としての要素を持ち便に黄土色の色をつけます。
その過程のどこかで炎症やがんなどの腫瘍による通過障害などがあると胆汁=ビリルビンの流れが阻害されます。
その作用により便の色が着色されず白くなります。
また、脂肪の消化吸収が悪くなるので下痢になります。
便が白っぽく見える時は、いずれにしても医師の診察を受けるべきです。
ですが、それ以外に発熱やおう吐などの随伴する症状の有無をよく観察しておくと良いでしょう。
まとめ
下痢は過敏な人は少し冷えたくらいでもすぐに起こります。
不快なものですが「そのたびに病院に行くべきなのか」「すぐに止めた方が良い下痢なのか」受診しなくてもある程度判断ができれば負担も減らすことができます。
基本的には、原因が思い当たるような下痢で、数日で軽快すれば経過観察でも良いのではないでしょうか。
下痢をしてもすぐにトイレで流してしまうことが多く、色までは見ないことが多いかもしれません。
ですが便の色は健康のバロメーターです。ぜひ排便の観察は日常的なクセにして頂きたいと思います。